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肖像画の中の近代 ― マリオネットと暮らす帝冠様式の街

安田英之

人名・称号・制服とドイツ第三帝国をモチーフとするガルトラントだが、 肝心の建築には第三帝国様式の影響は見られない。 井上章一の帝冠様式ファッショ性否定論である。 遺伝子操作の発達した未来の世界、 徳川家安・ヘスといった史上の人名を持つ人物、といった手法は、 大塚英志原作の『JAPAN』を思い起こさせる。 メソポタミア号と、そこに捕らわれているローレライとが、一体として 近代を象徴しているとすると、 ジャポネスとガルトラントとが反近代の 近代和風 (未来和風と呼ぶべきか?) のジャポネス歴史博物館の跡地に建てられた テラII歴史博物館は洋館である。 「近代の超克」とは、近代を手にすることができなかった男たちが作り上げた 間に合わせの社会、いずれは近代に取ってかわられるだけの存在なのだろうか。 最終話でのローレライ演説も、彼らを忘れてはなりませんといいつつ、超克論 を象徴するマリオネットたちを銅像に封印する役割を果たしているように思え てならない。

YASUDA Hideyuki
Last modified: Mon Sep 3 00:54:16 PDT 2001
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